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性悪猫/猫を抱いて象と泳ぐ [book]

猫がでてくる本、ぽつぽつ読んでます。


性悪猫 (やまだ紫選集)

性悪猫 (やまだ紫選集)

  • 作者: やまだ 紫
  • 出版社/メーカー: 小学館クリエイティブ
  • 発売日: 2009/10
  • メディア: 単行本



パウル・クレーは、絵画の詩人、といわれることがあるけど、
この作品で、やまだ紫さんは、漫画の詩人かもしれない。

猫が、猫の生活の中、猫の言葉で綴ってる。
線描のしなやかな猫たち。さまざま変わる美しい季節を背景に。

拾われたばりで、ずぶぬれの、ぎすぎすだったり。
心が泣いている飼い主のそばだったり。

「せけんなど どうでもいいのです
お日様いっこ あればー」

詩集のように、時々読み返し、言葉を噛みしめたい本。
やまだ紫さん自身も、どんな状況もストンと受け止め生きてきたヒトなんだろうな。


猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/07/08
  • メディア: 文庫



「慌てるな。坊や」
静謐で美しいチェスを紡ぎだす、リトル・アリョーヒンの心にこだまする亡きマスターの声。

普通の幸せ、という点から見たら、決して、恵まれなかった彼なのだけど、
あたたかさに包まれているのが痛いほどわかって、何度も、何度も、泣いてしまった。

ありのままを、ありのままに受け止め、
チェスの海の中、猫のポーンを抱き、ビショップの象と泳いで行く姿は、
あまりに静かで、自由で、美しい。

生まれつき唇が閉じて生まれ、
切開手術で、脛から皮膚移植したため、唇に毛が生えている少年の物語、ということで、
昔、見た映画、「エレファント・マン」の後味の悪さを思い出し、ずっと敬遠していたけれど、
この小説には気分の悪さは全くなく、異形すら必然だったのではと思えてくる。

以前、小川洋子の「妊娠カレンダー」を読んだ時、
残酷で甘美な世界に嫌気が差したのだけど、
否が応でも、それが現実なのね・・・。
ただし、現実を受け止めて、辿り着ける世界があるとしたならば、
この「猫を抱いて象を泳ぐ」なんだろうな。

めずらしく、同じ作家さんの作品が、ひとすじにつながったなぁと感じられる本でもありました。

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